第9夜

アイデンティティとは他者と共有するところに存在するものなので、自分の内側を探したところで見つからない。そもそも道に迷って右往左往している自分の内に、明快な答えが用意されているはずがない。

探すべきものは、「自分と何かを共有する他者はどこにいるだろう?」なのである。

──齋藤孝さんが『折れない心の作り方』のなかで

 

齋藤孝さんが自分探しをする若者について一言。「本当の自分とは何なのだろう?」と自分の内側を見つめていこうとするのは問いの立て方が間違っている。齋藤さんは人生の進路に迷ったとき、書物に向かったそうだ。この感覚は自分にもわかるぞ、理解できるぞ、というものを読み漁る。著者と共感するたび、自分を確かなものと感じることができる。 

自分とはどういうものかを知るための近道は、自分と共有できるものを持つ人がいることに気づくこと。そういう他者の発見をしていくところにある。ここにもいる、あそこにもいる、と複数のかたちで発見できる人は、アイデンティティの根を広げていける。