第6夜

職業を決めるとき、「自分の指向からだけで出発しない」は一つの発想のポイントになる。自分がなりたい、やりたいと考えているものだけではなく、自分のいままでの人生がどう活きてくるか、これだったらいままでインプットしてきたものを全部つなげていけるんじゃないか、という視点から考えてみる。

── 齋藤孝さんが『折れない心の作り方』のなかで

 

黒澤明は、早くから映画をつくりたいと思っていたわけではなかった。当時は画家になりたいと思っていたのだが、自分に画家として才能があるのかと気持ちがざわめいた。ふと新聞を読んでいたら、映画撮影所の助監督募集の広告が目に飛び込んだのがきっかけだそう。

映画監督になろうと思って、小さいころからたくさん映画を観て、映画学校に入って、夢の実現に向かっていくのもたしかに一つの道だ。しかし、誰でもなろうとしてなれるものではない。

自分自身の力があれば何にでもなれるわけではなく、さまざまな外的条件、タイミング、縁といったものが働き合って、道は拓かれていく。自分の思いだけ強ければ成功するわけではない。